退職金や年金も財産分与の対象となるのか

代表弁護士 佐々木 一夫 (ささきかずお)

財産分与とは「夫婦が結婚後に築いた財産を、それぞれの財産上積みの貢献度に応じて分与する」ことですが、配偶者が長く働いた職場を去る際に受け取る退職金や、積み立ててきた年金は分与の対象になるのでしょうか。

熟年離婚を考える方には非常に気になるトピックだと思います。詳しく見ていきましょう。

「配偶者が家庭を支えたから仕事ができた」=「退職金も分割」

結論から言えば、退職金は財産分与の対象となります。
現在、退職金は「給与の一部」であると考えられており、「配偶者が家庭を支えることで獲得できた財産」と見なされることがその理由です。

通常、財産分与の相場は「2分の1」ですが、退職金については特殊な計算方法がつかわれており、勤続年数が婚姻期間よりも長い場合は、割り合いが減額されるのです。
例えば、勤続20年で、婚姻期間が15年の場合、勤続年数に占める婚姻期間の割合が4分の3、つまり75%となるので、財産分与の際は退職金の75%を折半することになります。

ただし、財産分与を請求する時点で退職金が残っていなければ請求が不可能になりますので、配偶者に対し、離婚に伴う財産分与を申し出る際にはタイミングに充分注意してください。

配偶者が納付した保険料も受け取れる

平成19年から年金分割の制度が実施されたために、離婚後も配偶者が支払った保険料の一部を年金として受け取ることができるようになりました。
しかし、条件がいくつかあります。

1つ目は「受給年齢」です。
離婚したからといってすぐに年金がもらえるわけではありません。受け取る側が国の定めた「年金受給年齢」に達している必要があります。

2つ目が「資格期間を満たしているかどうか」です。
年金の資格期間は25年なので、配偶者が25年間年金を支払っていなければ受け取ることができません。

そして一番気をつけたい3つ目が「年金の種類」です。
受け取ることができるのは公務員が加入する「共済年金」と民間企業で働くサラリーマンが加入する「厚生年金」のみで、国民保険は対象外です。
したがって、配偶者が自営業の場合は、年金分割の制度が利用できません。

ここで気をつけなければならないのは、この制度を利用するメリットがあるのは「婚姻期間中に、自分ではなく配偶者が厚生年金や共済年金を多く支払っていた場合」のみです。

年金分割は、収入に格差のある夫婦を対象に「夫婦二人が力を合わせて年金を支払ってきた。それなのに受給されるのが片方だけでは不公平だ。」という考えのもとできた制度なので、受給額が多い方は逆に分割を請求される側になってしまいますので、充分気を付けてください。

この手続をする際は、請求者の現住所を管轄している日本年金機構に「標準報酬改定請求書」という書類を提出しなければなりません。
また、請求にはこの書類だけではなく、一緒に用意しなければならない資料が他にもたくさんあるので、参考までに挙げておきます。

  • 年金手帳
  • 離婚届
  • 戸籍謄本
  • 按分割合を決めた公正証書や調停証書、確定判決(合意分割の場合のみ)

尚、年金分割には請求期限が存在します。
「離婚が成立した日の翌日から2年間」を過ぎると、原則として分割請求は認められませんので、希望する場合には必ずこの期限内に行ってください。

配偶者の退職前に離婚しても、退職金は分与される

退職金は、「離婚の時点での財産を分ける」ことが原則なので、本来ならば財産分与の対象とはなりません。
しかし「退職が間近」「配偶者の会社の職務規定で退職金の算出方法が定められている」「会社の経営状態が安定しており退職金のカットは考えにくい」などといった「近いうちに確実に退職金が手に入る」ような場合であれば、財産分与の対象となります。

逆に「退職まで相当の時間がかかる」「会社の経営状態が安定していない」「職務規定に退職金に関する取り決めがない」などの場合は、退職金を財産分与の対象にすることはできません。
退職までかなりの時間があるなら、配偶者はその期間内に転職や早期退職をする可能性もありますし、会社の経営が不安定であったり、職務規定に退職金に関する取り決めがないような場合であれば、退職金を受け取れる見通しがつかないからです。

財産分与はナイーブな問題、だからこそプロに相談を

熟年離婚などに伴う財産分与には、非常に複雑な話し合いと、大きなストレスがかかります。
配偶者と築き上げた財産には様々なものがあるので、当事者同士の話し合いで分与をスムーズに進めるのはほぼ不可能と言ってもよいくらい困難です。

なにより長年連れ添った相手と「お金」について争うのは、いくら離婚を決めていたとしても、心中辛いものがあります。
このような煩雑さや辛さを少しでも軽減し、公平な結果を出すために、法律や法律家は存在します。

当事務所は、お客様のプライバシーの保護をとても大切に考えており、ご相談については完全個室のお部屋にてお伺いするようにしております。
他のお客様にお顔を見られたり話を聞かれる心配はございませんので、どうぞご安心ください。

また、お忙しい方のために、お電話での無料相談についても行っております。
当事務所の場合、電話だから、無料だからといった理由で、アドバイスや知識を出し惜しみすることは一切ございません。
むしろ、電話相談だとしても、お伝えできる情報に関しては全てお話ししております。
その上で正式に当事務所にご依頼したいと思っていただけた場合に、後日事務所までお越しいただいております。

弁護士の選び方にも様々な考え方がありますが、一番重要なことはお客様が「この弁護士に任せたい」「この弁護士に任せて万が一ダメだったとしても納得できる」そう思えるような弁護士を選ぶことが大切になってくるでしょう。
当事務所もより多くのお客様からそう思っていただける弁護士になれるよう、日々精進しております。

まずはお気軽に当事務所にご相談ください。無料相談も随時受け付けております。

財産分与の相場や対象になるものについては、下記ページで更にわかりやすく説明しておりますので併せてご覧ください。

【関連記事】車や家も対象に?離婚時の財産分与の相場とその対象
トップページへ