母親が親権を勝ち取るために知っておくべき事

代表弁護士 佐々木 一夫 (ささきかずお)

日本は、母親が親権を取りやすい国です。
平成29年の厚生労働省の調べによれば、平成27年の離婚件数のうち、未成年者の子どもを抱える家庭は全体の58.4%で、その中で妻が親権者になったケースは84.3%にも上ったそうです。

この記事では、なぜ女性が親権を取りやすいか、そんな女性でも親権が取れないケース、親権取得のポイントなどについてご紹介いたします。

母親の親権取得率が8割を超える理由

冒頭でも紹介しましたが、日本では母親が親権を取得する確率が高く、その数は8割を超えています。
なぜ女性がこれほど有利なのか、それには女性ならではの理由がありました。

子ども自身が母親を選ぶと考えられている

親権者は「子どもの幸せ」を基準に選ばれますが、仕事や社外の付き合いで帰りが遅くなることが多い父親よりも、比較的子どもと過ごす時間が長い母親の方を子どもは選ぶと考えられています。

そんな母親を裁判所は「愛情を持って育てることができる」と見なします。
現在では女性の社会進出も進み、仕事の内容や責任もほぼ男性と遜色なくなってきましたが、法律の世界ではまだこのような考え方が支配的です。

これまでの判例が、母親を親権者としてきた

裁判は過去の判例を重視するので、同じようなケースの裁判では、従来通り母親を親権者にする傾向があります。
特に乳幼児の場合は、その健全な育成には母親が持つ「母性」が必要とされるので、なおさらその傾向が強くなります。

男性は女性よりもフルタイムで働いている場合が多いから

女性の社会進出が進んできたとはいえ、女性に比べ男性の方がフルタイムで働く割合は多いです。
そのため男性は「その状態では子育てに手が回らないだろう」と判断されてしまい、親権が取りづらくなるのです。

親権を取る際最重要視されるのは「子どもの幸せ」

裁判の際、親権を決める際に最も重要視するのは「子どもの幸せ」です。
民法820条で「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育する権利を有し、義務を負う」とあるのがその根拠です。

裁判ではどちらの親と生活する方が幸せになりそうかという基準で親権者を選ぶので、必ずしも母親が親権を取れるわけではないという事に注意をしてください。
もちろん、一般的には「子どもと同居している方」「子どもが幼ければ母親」が有利とされていますが、一概には言い切れません。

父親の方が子どもにとって適切な環境を用意していると判断されれば、親権がそちらに行くことも充分あり得ます。
むしろ母親でも、婚姻期間中に育児放棄をしたなどの過去があればほぼ男性側が親権を取得することになるでしょう。
「何が子どもにとって幸せなのか」という点をもとに、親権取得を目指しましょう。

尚「離婚の原因と子どもの幸せは直接関係しない」と判断されるため、不貞行為などを行なった有責配偶者が親権を取得する場合もあるので充分注意してください。
もっとも「夫が子どもの目の前で自分を殴った」「夫が子どもを家に一人で残し愛人のもとに行った」など「有責の内容」が「子どもの幸せ」を脅かしていれば、相手の親権取得を阻止するきっかけになります。

子どもは母と父どちらについていきたがっているか

子どもの年齢も重要です。
「小さい子どもの場合は母親が有利」となる場合が多いのは事実ですが、10~15歳くらいから、裁判所は子ども自身の意思を尊重するようになります。

家庭家事手続法では「親権者の指定または変更の審判において、15歳以上の子はその陳述を聞かなければならない」と定めています。
これは「15歳以上の子どもであれば一般的な判断能力が備わっている」とされ、その陳述をもとに子どもの意思を尊重した親権者選択をしなければならないと考えられていることが理由です。

15歳未満の子供についても、10歳程度であれば、ある程度の判断能力が備わっていると判断されるため、審判にあたっては家庭裁判所調査官から意思を確認されるケースが多いです。

これくらいの年ごろの子どもの親権を取るには「やはりお父さんよりお母さんについていきたい」と思わせるような普段の姿勢が必要なのでしょう。

親権が認められない時は「面接交流権」で子どもと会おう

万が一親権が認められなかったとしても、子どもに会う方法はあります。
協議や調停で「面接交流権」を保持しておけば、定期的に子どもに会うことができるのです。

この権利は、親のものではなく「子どもが親に会う権利」なので、子ども自身が会いたがっているのに、不当にこの権利を侵害すれば、裁判所から「親権者として不適切」と見なされる可能性もあります。

面会交流は、子ども自身の「自分は両親に愛されている」という意識を高め、心身の健全な育成を促すと認められています。

例え親権が取れなくても、このような形で子どもを愛することも、一つの方法です。

女性は親権取得に有利だが、油断は禁物。

確かに女性は男性に比べ、はるかに親権を取得しやすいですが、必ず取得できるわけでもありません。
準備がおろそかであれば、足元をすくわれる可能性もあります。

そのような事態を防ぐためにも、親権取得の際は弁護士にご依頼ください。
当事務所では、無料の電話相談も受け付けております。

親権が決定される際のポイントや注意点については、下記ページで更にわかりやすく説明しておりますので併せてご覧ください。

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