車や家も対象に?離婚時の財産分与の相場とその対象

代表弁護士 佐々木 一夫 (ささきかずお)

離婚する際は、夫婦の共有財産を清算し「財産分与」と呼ばれる手続を取ります。
これにより、持っている財産が少ない方は、多い方から一定の財産を受け取れる可能性があります。

しかしこの制度には、分かりづらい点も多いので、離婚前にきちんとポイントを押さえておく必要があります。

この記事では、財産分与の相場や、対象になるものについてご説明していきます。

対象となるのは「結婚後に築いた財産」

「財産分与」とは「結婚生活中に夫婦が協力した財産を、それぞれが財産の上積みに貢献した度合いに応じて分ける」ことを指します。
この際、離婚の理由やどちらが有責かは財産分与の割合には全く関係しません。

つまり、財産分与の際に対象となるのは「結婚後に築いた財産」ということになります。

そのため、配偶者が結婚前に取得した財産は、対象になりません。
したがって「結婚前に持っていた貯金」などは結婚前の財産なので、財産分与の対象にはなりません。

尚、財産分与の割合ですが、過去の判例に照らし合わせると「専業主婦(夫)が30~50%」「家業に協力している場合が50%」「共働きの場合が50%」とあります。しかし、最近は専業主婦(夫)であっても、何らかの形態で働いていても、原則同じ50%として扱うことが多くなってきました。

財産分与の対象には何があるか

財産分与の対象は現金に限りません。結婚後に夫婦築き上げた財産のうち、以下のようなものが財産分与の対象として認められます。

不動産

土地や建物などは財産分与の対象になります。
仮にそれが夫婦どちらかの名義であったとしても同様です。

家具・家電

ベッドやテレビ、冷蔵庫などの家具や家電も、購入したのが結婚後であれば、財産分与の対象となります。

有価証券

株券や社債などの有価証券も、分与の対象となります。

年金

厚生年金、共済年金なども対象となります。
なお、年金については、夫婦それぞれが今まで支払ってきた年金を決められた割合で分割する「年金分割」という方法があります。

ただ、この制度の対象は会社員が加入する厚生年金や、公務員が加入する共済年金の部分だけで、国民年金は対象となりません。したがって、配偶者が会社員や公務員の経験を持たない自営業者などの場合は年金分割は難しいと言えます

退職金

離婚時に退職が近く、退職金がもらえる可能性が高い場合は財産分与の対象となります。
しかし「退職まで10年以上かかる」「会社の経営状態が悪く退職金が支払われるかどうかわからない」「そもそも会社の就業規則に退職金に関する規定はない」といったような「将来退職金をもらうことが確実とは言えない」場合、退職金を財産分与の対象にすることは難しくなってきます。

また、これらのような「プラスの財産」だけではなく、借金のような「マイナスの財産」も、財産分与の際は考慮されます。

例えば、結婚後に作る借金の代表格である「住宅ローン」の場合、財産の価値を決める際には「自宅の価格からローンの残額を引く」というような形で考慮されます。
ちなみに、財産分与は「結婚後の財産を築くために貢献した度合い」で決定されますが、基本的には夫婦共働きの場合も、どちらかが専業主婦(主夫)である場合も2分の1の割合で共有財産は分与されます。

他に、財産分与の対象とならないもの

「結婚前に築いた財産」は財産分与の対象にならない、と先ほども述べましたが、お金のほかにもこのような財産は、分与の対象になりません。

  • 結婚の際、実家から持ってきた家具や家電
  • 洋服や化粧品などの個人の持ち物
  • 自分の親から相続した財産
  • 結婚前の貯金
  • 親に買ってもらった車やバイク

このように、結婚前に買ったものや日常生活の範囲で双方が個別に使っていた貴金属やバッグ、時計、スポーツ用品などは分与の対象になることは基本的にありませんが、それがコレクターズアイテムとなるような高価な品だった場合、財産分与の対象となる場合もありますので、判断に迷ったら弁護士に相談することをおすすめします。

また、住宅ローンのような、「夫婦が共同生活を送るために発生した借金」は財産分与の際に考慮されますが、ギャンブルや生活レベルに合わない浪費など、「夫婦の共同生活の維持に全く関係ない理由」で作った借金は一切考慮されませんので、充分に注意してください。

財産分与で損をしたくなければ、弁護士に相談を

離婚時の財産分与には、非常に煩雑な証拠集めや手続などが付き物です。
これらの作業を、法的知識のない方が一人で行うことは非常に困難と言えるでしょう。

少しでもご自分にとって有利に財産分与を進めるには、経験を積んだ専門家のサポートがかかせません。

当事務所は、財産分与だけに注目するのではなく、お客様の望まれる解決の全体像について強く意識してサポートすることを大切にしています。
例えば、財産分与や慰謝料請求をとことん交渉するとなると、最終的には訴訟まで視野に入れて戦う必要性が出てくるため、当然解決までは長い時間がかかることが予想されます。

それよりも早く離婚して新しいステップを踏み出したいというお客様であれば、財産分与や慰謝料請求にこだわりすぎず、適切なところで折り合いをつけて、裁判にはしないという判断も重要となるでしょう。

このように、どこに主題をおくのかによって、ベストと呼べる着地点は変わってくるのです。
当事務所は、そのお客様にとってのベストな着地点のイメージをお客様自身と共有してサポートするよう心がけております。

財産分与に不安を感じたら、当事務所までお気軽にご連絡ください。お電話でのご相談にも応じております。

なお、お電話でのご相談でも、知識を出し惜しみすることなく、お答えできることについては全てお答えいたします。
その上で当事務所にご依頼したい、と思っていただけたなら、後日当事務所までご来所いただきます。

また、「退職金は財産分与される?」とよくお問い合わせをいただきます。
退職金の財産分与については下記ページで更にわかりやすく説明しておりますので併せてご覧ください。

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